これまでの連載では、J-PlatPatを使って、
- キーワードから特許を探す
- 公報を読む
- 検索項目を指定する
- 近傍検索を使う
- FI・Fタームなどの特許分類を使う
といった方法を紹介してきました。
今回は、一歩進んで、J-PlatPatの「論理式入力」を使います。
論理式入力は一見難しそうですが、選択入力で設定した検索条件と内容的には同じなので、基本的な仕組みはそれほど難しくありません。
J-PlatPatでは、「選択入力」で設定した検索条件を論理式へ自動的に展開することもできるため、最初は選択入力から論理式を作るのが簡単です。
今回は、まず選択入力から論理式を作り、それを読み解きながら、最後に自分で論理式を組み立ててみます。
【記事一覧】
例題で解説する J-PlatPat の使い方 (1) ―― まずは簡易検索で特許を1件見つける
例題で解説する J-PlatPat の使い方 (2) ―― 番号検索で調べる
例題で解説する J-PlatPat の使い方 (3) ―― 5分で特許公報の内容をつかむ
例題で解説する J-PlatPat の使い方 (4) ―― キーワード検索を使いこなす
例題で解説する J-PlatPat の使い方 (5) ―― 検索結果をもっと絞る
例題で解説する J-PlatPat の使い方 (6) ―― FI・Fタームで検索する
例題で解説する J-PlatPat の使い方 (7) ―― 論理式で検索する
今回の検索ミッション
今回も、これまでと同じ例題を使います。
探したいのは、
スマートウォッチなどのウェアラブル端末で、ユーザーの転倒を検出する技術
です。
これまでの調査で、次のような検索語が見つかっていました。
| 概念 | キーワードの候補 |
| デバイス | スマートウォッチ ウェアラブル 腕時計型 装着型 |
| 現象 | 転倒 転落 異常イベント |
| 動作 | 検出 判定 識別 |
| 状態 | 姿勢 衝撃 動作 |
| センサー | 加速度センサ 慣性センサ 慣性測定ユニット |
| 対応 | 通知 通報 緊急連絡 通報 |
第4回では、このような言葉を「選択入力」の検索欄に分けて入力しました。
今回は、それを1つの検索式として表現してみます。
選択入力から論理式を作る
J-PlatPat には、選択入力で作成した検索条件を論理式へ変換する機能があります。
まずはこれを使ってみます。
Step1 「特許・実用新案検索」を開く
J-PlatPatのメニューから、「特許・実用新案」→「特許・実用新案検索」を選択します。

最初は「選択入力」タブを使います。

Step2 検索条件を入力する
(スマートウォッチ OR ウェアラブル)AND(転倒 OR 転落)
を選択入力で設定します。
まず、「要約/抄録」について、
- スマートウォッチ
- ウェアラブル
をOR条件で指定します。
さらに、
- 転倒
- 転落
をOR条件で指定し、先ほどの条件とANDで組み合わせます。

Step3 検索条件を論理式に展開する
検索条件を設定したら、画面下の「条件を論理式に展開」をクリックします。

すると、選択入力で作った検索条件が「論理式入力」の形式へ変換されます。
「検索」をクリックして、検索を実行します。

要約検索から全文検索へ広げる
要約で検索した結果、「検索結果が少ない」あるいは「目的に関連する文献が少ない」という場合があります。
その場合は、検索対象を全文に広げて、論理式を修正します。
「全文」の構造タグは「/TX」です。
[スマートウォッチ/TX+ウェアラブル/TX]*[転倒/TX+転落/TX]
となります。
これによって、要約だけでなく、明細書などを含む全文が検索対象になります。

検索対象を請求項に限定する
次に、特許の権利範囲である請求項に「転倒検出」がある特許を探す場合について考えます。
「請求の範囲」の構造タグは「/CL」ですので、
[転倒/CL+転落/CL]*[検出/CL+判定/CL+識別/CL]
という論理式によって検索できます。

FIを論理式に組み込む
第6回で紹介したように、FI や Fターム などの特許分類を使うことで網羅性を上げた検索を行います。
これまで検索してきた文献の情報、および PMGS から、今回のミッションに適した FI を探し、論理式に組み込みます。
例えば、以下の FI を使った論理式を作成します。
| FI | 説明 |
| A61B 5/11 | 身体全体またはその部分の動きを測定するもの,例.頭または手の震えまたは4肢の運動性 |
| G01P 15/00 | 加速度の測定,減速度の測定;衝撃,すなわち加速度の急激な変化,の測定 |
| G08B 21/02 | 人の安全確認のための警報 |
| G08B 21/04 | 動きの無いことによるもの,例.老人 |
これらの FI を母集合として、「スマートウォッチなどのウェアラブル端末で、ユーザーの転倒に関係する」技術を検索する論理式は以下のようになります。
[A61B5/11/FI+G01P15/00/FI+G08B21/02/FI+G08B21/04/FI]*[転倒/TX+転落/TX+異常/TX]*[スマートウォッチ/TX+ウェアラブル/TX+腕時計/TX]

このように論理式を使うと、
- FI × キーワード
- Fターム × キーワード
- 複数の分類 × 複数のキーワード
といった検索条件を、1本の式として整理できるため、式の視認性が上がります。
ここに論理式入力の大きなメリットがあります。
近傍検索を使った論理式
第5回で紹介した近傍検索も、論理式の中で指定できます。
例えば、J-PlatPat では 2つ または 3つ のキーワードについて、
- キーワード間の距離
- 語順の有無
を指定できます。
近傍検索では、キーワード間の間隔を1~99まで指定できます。間隔は、和文検索では文字数、英文検索では単語数でカウントされます。
例えば、
転倒,20N,検出/TX
という形では、全文中に「転倒」と「検出」が20文字以内に出現し、その語順を指定しない(N)という条件を表します。
語順の指定は、語順あり=C,c、語順なし=N,n が記述できます。
近傍検索を使った論理式は、例えば以下のようになります。
「スマートウォッチなどのウェアラブル端末に関するワードがあり、転倒と検知に関するワードが 50文字以内に出現する」という検索を行う論理式の例です。
[A61B5/11/FI+G01P15/00/FI+G08B21/02/FI+G08B21/04/FI]*(転倒+転落+異常),50N,(検出+判定+識別)/TX*(スマートウォッチ+ウェアラブル+腕時計)/TX]

近傍検索を使うことによって、より目的に近い文献を検索することができます。
検索期間の指定
検索期間の指定は、「検索オプション」の「日付指定」で行います。
例えば、
2015年1月1日~2025年12月31日に公開された文献
を検索するという条件なら、検索オプション側で期間を指定します。

論理式の保存
論理式を使うメリットは、複雑な検索ができることだけではありません。
一度作った検索条件を再利用しやすい
ことも大きなメリットです。
J-PlatPatには、論理式と検索条件を保存し、後から読み込む機能があります。
同じテーマの検索を何度も行う場合、最初から検索条件を入力するより、保存した検索条件を読み込んだ方が効率的です。
「論理式入力」から「論理式を保存」をクリックします。

保存する検索条件をチェックして、「保存」をクリックします。

保存した論理式を再度読み込むときは、「論理式を読み込む」をクリックします。
読み込む論理式を選択して「読み込む」ボタンをクリックします。

ただし、保存できる論理式は3つまでですので、収容量が少ないと思います。
実務的には、Word や Excel 上で論理式を作成し、それをコピー・ペーストして、J-PlatPat で検索を実行する方が効率的です。
重複した文献の差し引き
例えば、論理式 L1 が、
(スマートウォッチ+ウェアラブル)/TX*(転倒+転落)/TX
論理式 L2 が、
(検出+判定+識別)/TX*(転倒+転落)/TX
のような論理式で検索を行ったとき、L1 の検索結果と L2 の検索結果には重複した文献があります。
そこで、L2 の検索結果から L1 の検索結果を除外するためには、
[(検出+判定+識別)/TX*(転倒+転落)/TX]-[(スマートウォッチ+ウェアラブル)/TX*(転倒+転落)/TX] … ※
という論理式を J-PlatPat に入力して、検索を行います。
なお、論理式 L1 と論理式 L2 を以下のように定義して、
L1=(スマートウォッチ+ウェアラブル)/TX*(転倒+転落)/TX
L2=(検出+判定+識別)/TX*(転倒+転落)/TX
L2 – L1
という論理式が作成できると便利なのですが、J-PlatPat に論理式を記号に定義する機能がありませんので、上記の ※ のように直接論理式を引き算します。
構造タグ
上記の検索式の「/AB」の部分は 構造タグ です。
構造タグとは、文献のどの部分を検索するのか、を示す記号です。
「スマートウォッチ/AB」は、「『要約/抄録』の中でスマートウォッチを探す」ということを意味します。
J-PlatPat の論理式入力で使用できる構造タグは、特許・実用新案検索のヘルプ の「論理式で指定できる検索項目」にまとめてあります。
演算子
論理式入力では、AND, OR, NOT の演算子が使えます。
「AND」は論理積です。
例えば「ウェアラブル/AB AND 転倒/AB」は、「要約に『ウェアラブル』と『転倒』の両方を含む文献」という意味です。
「AND」は「*」で代用することができます。
「OR」は論理和です。
例えば「スマートウォッチ/AB OR ウェアラブル/AB」は、「要約に『スマートウォッチ』あるいは『ウェアラブル』を含む文献」という意味です。
「OR」は「+」またはスペースで代用することができます。
「NOT」は論理否定です。
例えば「スマートウォッチ/AB NOT ウェアラブル/AB」は、「要約に『スマートウォッチ』を含むが、『ウェアラブル』を含まない文献」という意味です。
「NOT」は「-」で代用することができます。
NOT検索には注意が必要です。
必要な特許の明細書中に、たまたま除外語が記載されている場合でも、その文献は検索結果から削除されてしまいます。
NOTを使う際には、そのキーワードがめったに出現しないもので、除外したい文献にだけ含まれることを確認して使用することをお勧めします。
[ ](大括弧)は優先順位の変更を意味します。
論理式の中で優先的に処理したい範囲を [ ] で囲みます。三重の入れ子まで指定できます。
J-PlatPat の論理式入力で使用できる演算子は、特許・実用新案検索のヘルプ の「使用できる演算子について」にまとめてあります。
まとめ
ここまで7回にわたって J-PlatPat における特許検索の方法を紹介してきました。
最初は、
スマートウォッチ 転倒
という非常に単純な検索でした。
そこから公報を読み、
- ウェアラブル端末
- 装着型電子機器
- 加速度センサ
- 慣性センサ
- 姿勢
- 衝撃
- 緊急通知
といった言葉を発見しました。
さらに、
- 要約検索
- 請求項検索
- 出願人検索
- 日付検索
- 除外キーワード
- 近傍検索
- ステータス検索
- FI、Fターム、IPCといった特許分類
を利用して検索結果を改善しました。
最後に論理式を使った検索を行うところまで進みました。
論理式を使うメリットは、自分がどのような考え方で特許を探しているのかを、検索式として可視化できることです。
特許検索は、
検索する
↓
検索結果を見る
↓
公報を読む
↓
分類やキーワードを発見する
↓
検索条件を修正する
というサイクルを繰り返して、思う検索結果に近づけることが大切です。
最後までお読みいただきありがとうございました。

