スマートフォンの背面も画面に!Appleが描く“360度UI”のデバイス (US12282361B2)

IT特許

Appleは「ラップアラウンドディスプレイ付き電子機器」に関する特許(US12282361B2)を取得しました。この革新的な発明は、スマートフォンや携帯型メディアデバイスのディスプレイは前面にあるという固定常識を覆し、デバイスを筒状に包み込むような“360度ディスプレイ”という新たなユーザーインターフェースの可能性を提示しています。

この記事では、Appleが描く未来の“360度ディスプレイ”デバイス像を特許図面と技術ポイントから深掘りして解説していきます。

包み込むディスプレイの仕組み

この特許の核となるのは「透明な筐体とその内側に巻かれた柔軟なディスプレイ」です。イメージとしては、ガラスの筒の中に巻物状のディスプレイが入っており、それが展開して全方位に映像を表示する仕組みです。

注目すべき技術ポイント

  • 360度どこでも表示可能なUI : 画面がデバイスの背面や側面にも広がる。
  • 物理ボタンを排除したバーチャル操作 : UIが表示されて初めて現れる操作エリア。
  • 顔認識で表示を最適化 : 見る位置に応じて画面が“向きを変える”。

まさに、現実の空間と画面との境界を曖昧にする技術です。

なぜ“360度UI”が求められるのか?

Appleがこのような全方向表示型UIに注目する理由は明快です。

  • 情報密度の向上:通知やアプリをデバイスの好きな位置に配置でき、視認性が向上。
  • 操作性の進化:デバイスのどこからでも操作できる=UIの自由度が飛躍的に向上。
  • 次世代UXの準備:ARや空間コンピューティングとの親和性も高い。

つまり、これは単なるハードウェア進化ではなく、「インターフェースの新常識」を再定義しようという挑戦なのです。

特許図面の説明

Fig.1:ハウジングとディスプレイの構造
Fig.1Bは、透明なハウジング(102)と、巻かれた状態の柔軟ディスプレイアセンブリ(104)です。ハウジングは透明なガラスやプラスチックで構成され、ディスプレイは加熱によって形状記憶し、冷却後に元の形に戻る特性を活かして、挿入後に内側に展開されます。ハウジングの内部に設けられた空間(112)に対して、ディスプレイがぴったりと張り付くような構造になっています。

Fig.2:デバイスの構造
デバイスの内部構造が示されています。2本の支持柱(202)が両端のエンドキャップ(204・206)によって固定され、中央にはプリント基板(210)、その上にバッテリー(212)とプロセッサ(214)が配置されます。各エンドキャップにはデータコネクタ(218)やアンテナ接続部(216)も内蔵され、デバイス全体の電気的接続が確保されています。

Fig.3:デバイスの断面構造
底面からの視点で、AMOLEDディスプレイアセンブリ(104)と基板(210)との接続が、センサーフレックス(304)を介して行われている様子が描かれています。また、ディスプレイの継ぎ目にはラップジョイント(306)が用いられており、継ぎ目が目立たないよう配慮されています。

AMOLED(アモレッド)は「Active Matrix Organic Light Emitting Diode」の略で、有機発光ダイオード(OLED)の各画素をアクティブマトリクスで制御しています。OLEDは視野角が広いので、横からディスプレイを見ても色や明るさが変わりません。また、アクティブマトリクスによりディスプレイの応答速度が速く、ゲームやスポーツなどの速い動きでも残像がなく表示できます。

Fig.4:デバイスの動作図
操作中のデバイスを示す図です。表示部(401)は全周に広がり、音量調整用UI(406)やマイク(402)、スピーカー(404)が配置されています。従来の物理ボタンは存在せず、表示に応じて動的に変化する仮想UIが導入されています。

Fig.5:さまざまなハウジングの形状
本特許で提案されているさまざまなハウジング形状です。Fig.5Aでは角の丸い長方形状ハウジング(502)、Fig.5Bでは円筒状ハウジング(512)、Fig.5Cではテーパー状にくびれたハウジング(522)が描かれています。Fig.5Aでは外部フレーム(504)で構造強度を向上させています。

Fig.7:2層構造ディスプレイのデバイス構造
2層構造のディスプレイ(702・704)を備えた構成が示されています。外層のディスプレイが半透明であることで、視差を利用した立体表示が可能となり、3Dコンテンツの提示にも対応できます。

まとめ

この特許が示すのは、単なる新技術ではありません。ユーザーとの接点そのものをデザインし直す、Appleらしいコンセプトの提案です。
全方位ディスプレイ、顔追従型UI、バーチャル操作領域、将来のスマートデバイスのアイデアが詰まっています。

特許情報

特許番号:US 12,282,361 B2
タイトル:Electronic Device With Wrap Around Display
発明者:Scott A. Myers
出願人:Apple Inc.
登録日:2025/4/22
出願日:2024/5/8
特許の詳細については、https://image-ppubs.uspto.gov/dirsearch-public/print/downloadPdf/12282361を参照してください。

【参考記事】[Patently Apple] (https://www.patentlyapple.com

※企業の特許は、製品になるものも、ならないものも、どちらも出願されます。今回紹介した特許が製品になるかどうか現時点では不明です。ご注意ください。

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