Apple Watchの転倒検出技術がここまで進化!新特許でわかる驚きの安全システムとは?(US12361810B2)

IT特許

2025年7月、Appleは新たな転倒検出技術に関する特許(US12361810B2)を取得しました。この特許は、Apple Watchなどのモバイルデバイスが、ユーザーが転倒したか、あるいは援助を必要としているかどうかを高精度に判断するためのアルゴリズムとシステムを提供します。

単なる加速度センサーの活用に留まらず、ユーザーの「活動状況(コンテキスト)」に応じて判断基準を切り替えるインテリジェントな機能が特徴です。
この記事では、この特許の内容を、図面と共に詳しく解説していきます。

コンテキストを考慮した転倒検出

Appleのこの発明は、スマートウォッチなどのモバイルデバイスを通じて、ユーザーが実際に「転倒」したかどうか、またその結果として「援助が必要か」を判断する技術です。

これまでの転倒検出は、単に加速度の急変や衝撃の大きさから判断するものでした。そのため、例えばバスケットボールやサイクリングを行っているときの激しい動きが「転倒」と誤認されてしまうことがありました。

この特許では、「ユーザーの現在の活動内容(歩行、サイクリング、スポーツなど)」をコンテキスト(文脈)として判別し、それに応じて検出ルールを切り替えるという点が画期的です。

どのようにして「活動内容」を判断するのか?

Appleのシステムは、加速度・位置・向きなど複数のセンサーデータから、ユーザーがどのような活動をしているのかを自動的に推定します。

  • 歩行中:移動速度と加速度が低い範囲に収まる
  • サイクリング中:移動距離と移動速度が高く、安定した振動パターンが検出される
  • スポーツ中:大きく変動する衝撃や手首の動きのパターンを持つ

このように、活動ごとに特定のセンサーパターンを学習しておき、それに一致するかどうかでコンテキストを切り替えます。

状態遷移とルールの切り替え

Fig.3に描かれた状態遷移図では、以下のように活動に伴って状態が切り替わります:

  • 例えば、デフォルト状態(歩行など)(302a) → サイクリング状態(302b) → スポーツ状態(302c) と状態が遷移します。
  • 各状態には、それぞれの活動に適した「転倒検出ルール」が割り当てられています。

これにより、例えば「サイクリング中に振動を受けても転倒と判断しない」「転倒後に静止していなければ通知を送らない」といった柔軟な判定が可能になります。

図面から読み解く転倒検出のロジック

Fig.4A:転倒を示すセンサー波形
Fig.4Aは、自転車に乗っているときにユーザの手首に装着されたモバイルデバイスの向きを表すセンサーデータ400であり、転倒が発生した際の手首の向きの変化を表しています。「0.1秒以内に大きな角度変化があり、かつ4秒間全体でも大きな変化あった」という急激な角度変化が短時間に発生していることがわかります。

Fig.4B:転倒していない場合の波形
Fig.4Bは、振動はあるものの、角度変化が少ないケース。通常のサイクリング中の動きと判断され、誤通知は避けられます。

Fig.6A・6B:衝撃方向の違い
FIg.6AではX・Y軸両方で強い衝撃があり、これは転倒の可能性が高いと判定されます。
Fig.6BではX軸のみに強い衝撃が見られ、Y軸は小さいため通常の運動と判定されます。

ハンドル形状の違いにも対応

Fig.5, 7:ハンドル形状の違い
味深い点として、特許はハンドルの形状(水平・垂直)に応じてセンサーデータの解釈も変えることを提案しています。

  • 水平ハンドル(Fig.5):Y軸衝撃が重要
  • 垂直ハンドル(FIg.7):Z軸の変化や手のカオス的な動きも考慮

これにより、マウンテンバイクやシティバイクなど、異なる車種でも高精度な転倒検出が可能になります。

通知プロセスの工夫

転倒が検出された場合でも、以下の条件を満たさない限り、通知は行われません:

  • 転倒後、ユーザーが静止状態になっている
  • 通知の前にユーザーに確認のアラート(Fig.9A)が出される
  • 応答がない場合はカウントダウン後、自動通知(Fig.9B・9C)

これにより「転倒ではなかったのに救急連絡が発信されてしまう」といった誤動作を避けています

まとめ

この特許の特徴は、「ユーザーの生活を寄り添って知能的な支援を行う」ことにあります。センサーとAIによってユーザーの活動をコンテキストとして理解し、必要なときにだけ介入する機能です。

将来的には、高齢者の見守りやリハビリテーション、自転車以外のスポーツ中の事故検出などにも応用が期待できます。

Appleの転倒検出技術は、センサーとコンテキスト認識を融合させた新しいフェーズに入りました。Apple Watchは単なる健康管理デバイスではなく、ユーザーの安全を見守るパートナーへと進化しつつあります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

特許情報

特許番号:US 12361810 B2
タイトル:Context Aware Fall Detection Using A Mobile Device
発明者:Sriram VenKateswaran, Parisa Dehleh Hossein Zadeh, Vinay R. Majjigi, Yann Jerome Julien Renard
出願人:Apple Inc.
公開日:2025/6/15
出願日:2024/5/26
特許の詳細については、US20240233507A1を参照してください。

【参考記事】[Patently Apple] (https://www.patentlyapple.com

※企業の特許は、製品になるものも、ならないものも、どちらも出願されます。今回紹介した特許が製品になるかどうか現時点では不明です。ご注意ください。

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