Appleが取得した特許(US2024/0219715A1)は、先進的な視線追跡技術を搭載したスマートグラスに関するものです。スマートグラスは、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)技術を用いた次世代のウェアラブルデバイスとして注目されています。視線追跡技術によってスマートグラスのユーザーエクスペリエンスが向上します。
このブログ記事では、この特許技術について詳しく解説し、その特徴や利点を紹介します。
視線追跡スマートグラスの特許の概要
このスマートグラスは、現実世界とコンピューターが生成したコンテンツを合成してユーザーに提示します。そして同時にユーザーがスマートグラスを通してコンテンツを視認するときの視線を追跡することができます。
スマートグラスが長時間使用できるように、ユーザーの目の動きを追跡するための2つの異なる視線追跡システムを備えています。1つは「グリントベースの視線追跡システム」、もう1つは「低消費電力の視線追跡システム」です。
2つの視線追跡技術の詳細
グリントベースの視線追跡システム:グリントベースの視線追跡システムでは、光源から発せられた光は、ユーザーの目(角膜)に反射し、その反射光(グリント)をカメラで撮影します。目の表面は非球面であり、反射光のパターンは目の形状によって歪むため、このパターンを解析することで、ユーザーの視線方向を特定することができます。
この技術は角膜反射法とも呼ばれます。
グリントベースの視線追跡システムは高精度な視線追跡を実現しますが、消費電力が高いことから常時使うことができないため、特定の状況下で使用されます。
低消費電力の視線追跡システム:低消費電力の視線追跡システムでは、光センサーで反射光の強度を測定します。このシステムは、光源から発せられた光が目の表面で反射し、その反射光の強度を測定することで視線方向を特定します。
この技術は強膜反射法とも呼ばれます。
低消費電力の視線追跡システムは、グリントベースのシステムに比べて消費電力が低いため、バッテリー寿命を延ばすことができ、常時使用に適しています。
視線追跡技術については、 視線を検出する技術 を参照してください。
図面の説明
Fig.1:ヘッドマウントデバイスの正面図
Fig.1は、ヘッドマウントデバイスの左目用の部分の正面図です。メガネの中央にあるブリッジ(26NB)の先には右目用の部分がありますが、図では省略されています。
ユーザーの頭部に装着されるメガネフレームには、レンズを保持するリム(26M)と、左右の眼球の前に置かれたレンズ(46)が含まれます。リムには、ユーザーの視線を追跡するための複数の視線追跡のコンポーネント(40)が配置されています。

Fig.3:現実のコンテンツとバーチャルコンテンツの統合図
Fig.3は、レンズ46を通してユーザが見ている像を示しています。現実世界の物体(52)と、コンピュータが生成したコンテンツ(54)が表示されています。ユーザーは56→58→60と視線を動かすことで、バーチャルコンテンツとインタラクションできます。

Fig.4:グリントベースの視線追跡システムの側面図
Fig.4は、グリントベースの視線追跡システムの側面図です。このシステムは、光源(40E)とカメラ(40C)を含み、ユーザーの目(42P)に光を照射して反射光(グリント)をカメラで撮影します。目の形状によって歪むグリントのパターンを解析することで、ユーザーの視線方向を特定します。

FIg.5:低消費電力の視線追跡システムの側面図
Fig.5は、低消費電力の視線追跡システムの側面図です。このシステムは、光源(40E)と光センサー(40D)を含み、目の表面で反射した光の強度を測定することで視線方向を特定します。このシステムは消費電力が低く、日常的な使用に適しています。

Fig.7:デバイスの側面図
Fig.7は、ヘッドマウントデバイスの側面図です。この図では、ヘッドマウントデバイスの支持構造(26)が示されており、レンズ(46)がユーザーの目の前に配置されています。視線追跡システムのコンポーネント(40)がフレームに組み込まれており、デバイスの外観を損なわないように設計されています。

まとめ
Apple Vision Proではグリントベースの視線追跡システムによって視線追跡を行っています。(Appleの”アイトラッキング”の説明 VisionProアイトラッキング を参照してください)。
グリントベースの視線追跡システムは、カメラで撮影するので電力消費が大きく長時間の使用が難しいので、低消費電力の視線追跡システムと併用することで実用的な使用時間が可能になります。
Appleが特許を出願した視線追跡システムを搭載したスマートグラスは、先端技術を駆使した革新的なデバイスです。このデバイスは、医療やエンターテイメント、広告など多岐にわたる分野での応用が期待されており、今後の技術の進化とともにさらなる可能性が広がるでしょう。視線追跡技術を活用することで、よりパーソナライズされた体験が提供され、私たちの生活はさらに便利で豊かになることでしょう。
特許情報
特許番号:US2024/0219715 A1
タイトル:Head-Mounted Devices With Dual Gaze Tracking Systems
発明者:Michael J. Oudenhoven, Brian S. Lau, David A. Kalinowski
出願人:Apple Inc.
公開日:2024/7/4
出願日:2021/3/13
特許の詳細については、US20240219715 を参照してください。
【参考記事】[Patently Apple] (https://www.patentlyapple.com/2024/07/apple-files-a-smartglasses-patent-relating-to-a-dual-gaze-tracking-system.html)
※企業の特許は、製品になるものも、ならないものも、どちらも出願されます。今回紹介した特許が製品になるかどうか現時点では不明です。ご注意ください。
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