Appleが「巻き取り式ディスプレイ端末」を開発中? 折り畳みスマートフォンの次を示す未来技術(US20250216904A1)

IT特許

Appleが「折り畳みiPhone」の投入を2026年に予定するなか、それに先駆けて公開された特許「US20250216904A1」は、さらに先を見据えた“巻き取り式ディスプレイ”という新たな可能性を提示しています。ポケットから iPhone を取り出し、端末の側面をスッと引き伸ばすと iPad サイズの大画面が出現する、そんな未来のデバイス像です。
この記事では、この特許の技術的背景や図面、そしてAppleが目指す未来のデバイス像について詳しく解説していきます。

折り畳みの先にある“巻き取り”の世界

折り畳み式スマートフォンはすでにSamsungやHuaweiなどが市場投入を進めていますが、Appleはこの潮流に安易に追従せず、独自の自社の方向性を探っています。今回明らかになったのが、「巻き取り式ディスプレイ」への本格的な取り組みです。

この技術は、ディスプレイをロール状に収納し、必要に応じて引き出すことで表示面を拡張できるものです。携帯性を両立しながら、従来の折り畳み型では実現できなかった滑らかな展開動作やフラットな表示面を可能にします。

特許の詳細:スクロール+フレックスの融合

この特許で示された電子デバイス(Fig.1〜Fig.17)は、内部にローラー機構を備え、柔軟なディスプレイを巻き取り収納する構造になっています。特に注目すべき特徴は以下の点です。

ローラー収納と展開機構

Fig.2, Fig.5, Fig.17は、ディスプレイをローラーに収納・展開している状態を示しています。

  • ディスプレイ(14)は、ハウジング内部のローラー(100B)に巻き取られた状態で格納されます。
  • 展開時には、エンド部分(104)を引っ張ることで、ディスプレイがローラーからスムーズに引き出され、フラットな表示面が形成されます。

この構造により、従来の折り畳みデバイスに見られた「折り目問題」や「可動部の耐久性」といった課題を回避できます。

Fig.17では、1本のローラーではなく複数のローラー(100A〜100D)を利用し、ディスプレイをハウジング(12)の内部で“蛇行”させながら収納する構成も紹介されています。これにより、本体の厚みを抑えながら、展開時に広い表示領域を確保できる、という非常に洗練された空間設計が可能となっています。

バイステイブル支持構造

Fig.3, 4は、Fig.2のライン24に沿って切断し、方向26から見たディスプレイ(14)の断面です。この図にあるのがAppleが独自に導入している「バイステイブル(双安定)メタルテープ(32)」です。
これは:
 • 展開時にはディスプレイの縁に沿って剛性を保ち、
 • 巻き取り時には柔軟に変形してローラーへ収納される構造
という、柔軟性と強度を両立した部品です。

Fig.5は、バイステイブルテープ(32)が磁石(40)によって引き寄せられ適切な位置に保持される状態を示しています。これは、巻き取り時のしわや歪みを防ぐ工夫です。

デバイスの応用形態成

特許では以下のような巻き取りディスプレイ技術の応用形態が示唆されています。

仮想キーボード+補助表示領域構成

Fig.15は、フレキシブルディスプレイ(14)を内蔵するデバイスの断面図です。

  • 本体(12)にはタッチスクリーン(14R)が搭載され、仮想キーボードが動的に形成され、
  • 必要に応じてフレキシブルディスプレイ(14)を斜めに引き出すことで拡張表示領域を提供します。

仮想キーボード+補助表示領域という構成は、折りたたみ型スマートフォンを再定義する可能性を秘めています。

透明窓を持ったハウジング

Fig.16は、ハウジング(12)に透明窓(98)を持ったデバイスの断面図です。

  • ディスプレイ(14)が巻き取られた状態では、透明窓(98)を通してディスプレイを見ることができます。
  • コンパクトなハウジングからディスプレイが水平方向や斜め方向に引き出され、通常時は小型端末として、展開時はタブレット的な使い方が可能になります。

この構成により、コンパクトさと見やすさの両立を実現することができます。

無線通信によるディスプレイドライバ制御

物理的な可動部が多くなると、配線の屈曲や断線が大きな問題になります。この課題に対してはワイヤレス通信を応用しています。 Fig.6に示されるように、ワイヤレス通信モジュール(44T, 44R)が採用され、構造体(12-1)内のプロセッサからの画像信号を無線でディスプレイドライバ(44D)に送信するという構成で、スクロール機構を妨げずに安定した表示制御を実現しています。

安定保持と保護:エンドキャップやマグネットの活用

巻き取り式や折りたたみ式のデバイス構造では、折りたたみから展開したとき、意図しない展開を防止すること必要です。Fig.9, Fig.10には、エンドキャップ(66)が示されています。機械的ロック機構により、使用中の意図しない折り畳みや、展開時のブレを防ぐ堅牢な構造となっています。

まとめ

この特許に見るAppleの戦略は、単なる「ディスプレイの巻き取り」ではありません。

  • バイステイブル支持構造の導入による剛性と柔軟性の両立
  • ワイヤレス制御による耐久性向上
  • ディスプレイの展開方法の多様化とUI面での工夫(仮想キーボード+補助ディスプレイ)

など、総合的な設計によるハードウェア・ソフトウェア双方の最適化を視野に入れた、非常に包括的なビジョンになっていると思われます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

特許情報

特許番号:US 2025/0216904 A1
タイトル:Electronic Device With Flexible Display Structures
発明者:Scott A. Myers
出願人:Apple Inc.
登録日:2025/6/3
出願日:2025/3/20
特許の詳細については、US20250216904A1を参照してください。

【参考記事】[Patently Apple] (https://www.patentlyapple.com

※企業の特許は、製品になるものも、ならないものも、どちらも出願されます。今回紹介した特許が製品になるかどうか現時点では不明です。ご注意ください。

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