特許検索を始めたばかりの頃、多くの人がまず「テキスト検索(キーワード検索)」に頼ります。しかし、テキスト検索で網羅的に特許検索を行うことは、実はとても難しいことなのです。
そこで登場するのが「特許分類」です。分類は、言葉の揺れを超えて技術内容を“記号化”し、文献群を体系的に束ねます。IPCはその国際標準であり、さらに欧米の実務で強力に機能するのがCPCです。
この記事では、IPCとCPCについて基本から解説します。
(以下の図は、特許庁、Espacenet、WIPOサイトの画面に加筆して作成しています。)
特許分類とは
特許における分類は、発明を技術内容の観点から整理し、膨大な特許文献の中から必要な情報を探し出すための基盤となる仕組みです。
特許文献は、出願人ごとに用語や説明の仕方が異なるため、キーワードだけに頼った検索では、重要な文献を見落としたり、逆に漏れを防ぐためにシソーラスを並べて範囲を広げると関係の薄い文献が大量に混ざったりすることがあります。
そこで、言葉の違いを超えて技術内容そのものを共通の物差しで整理する必要が生じます。この「共通ルール」として国際的に整備されているのが IPC(国際特許分類)であり、さらに欧州特許庁と米国特許庁が中心となって、より実務向けに細分化した体系が CPC(共同特許分類)です。特許検索を効率的かつ漏れなく行うためには、まず IPC の考え方と構造を理解し、その延長線上にある CPC の役割を把握することが重要になります。
IPCとは
IPC(International Patent Classification、国際特許分類)は、世界中の特許文献を同じ物差しで扱うための国際的な分類体系です。分類表は全技術分野を、セクションからクラス、サブクラス、メイングループ、サブグループへと段階的に細分化する“階層構造”を持っています。
IPCを一言で表すなら、「世界共通の特許の整理棚」です。
世界中で毎日生まれる膨大な特許文献は、テーマごとに整理しないと、有効に利用することが出来ません。そのために、技術分野ごとに“置き場所”を決めたのがIPCです。
イメージとしては、図書館の書架(本棚)です。
本は、小説、歴史、理工書…とジャンル別に並んでいるので、必要な本を探すことが出来ます。特許も同じで、「この発明はどの技術分野の棚に置くか」を決めるためのルールがIPCなのです。
IPCの大きな特徴は、「言語に依存しない」ことです。
日本語だろうが英語だろうが、中国語だろうが、同じ技術なら同じIPCが付けられます。これによって、海外特許を調べるときにも、IPCはとても強力な検索キーになります。
IPCの構成と分類の付与規則──大きな棚から小さな棚へ

IPCは、大きな区分(セクション)から、徐々に細かい区分へ降りていく設計です。
同様に、IPCの解釈においても「より大きな区分から小さな区分へ」という順序で把握していく必要があります。
ツリーの最上位にあるのが セクション です。
セクションはA〜Hの大区分で、たとえばAは生活必需品、Bは処理操作・運輸といった具合に技術領域の集合を決めます。
サブセクションは表示記号を持たず、セクション内の情報的な見出しとして置かれます。
次に クラス、サブクラス と進むにつれて、「どんな技術なのか」が具体的になっていきます。
その次にあるのが メイングループ と サブグループ。サブクラスをより実務的な粒度へ切り分けます。
ここまで来ると、「その発明が何をしている技術なのか」が、かなり明確になります。
クラスは「セクション記号+2桁数字」の記号で表されます(例:A01)。
さらにサブクラスは「クラス記号+英大文字1字」となります(例:A01B)。
さらに、メイングループとサブグループが「1~4桁の数字+斜線+2桁の数字」で表されます(例:1/02)。これらを合体して、例:A01B 1/02、のように表されます。
上図の分類表で、サブグループタイトルの前のドット「・」は、そのサブグループの階層を示しており、ドットが多いほど階層が深くなります。つまり、上に示した分類表のサブグループは以下ような階層構造になっています。

インデキシングコード──補助タグで検索を助ける仕組み
IPCには、分類とは別に インデキシングコード という仕組みがあります。これは、例えるなら「付箋」や「タグ」のようなものです。
上述したように、分類は「この発明はどの棚に置くか」を決めますが、インデキシングコードは「この発明には、こんな特徴もありますよ」と補足する役割を持っています。
検索するときに、
- 用途だけで横断的に探したい
- 材料が同じ技術をまとめて見たい
といったときに、インデキシングコードがとても役に立ちます。
たとえば、照明装置を扱うサブクラス F21L(照明器具の観点)では、用途・適用観点の F21W、光源形状観点の F21Y がインデキシングコードとして使えます。
インデキシングコードの例:
| F21L | 携帯用または特に輸送に適した,照明装置またはそのためのシステム (4)このサブクラスにおいては,サブクラス F21W と F21Y のインデキシングコードを付与することが望ましい。 |
| インデキシングコード | |
| F21W | 照明装置またはシステムの使用または適用に関するサブクラス F21K, F21L, F21S および F21V に結びつくインデキシング系列 |
| F21W 102/00 | 照明目的の車両外部の照明装置 |
| F21Y | 光源の形状もしくは種類または放射された光の色に関するサブクラス F21K, F21L, F21S および F21V に関連するインデキシング系列 |
| F21Y 101/00 | 点状光源 |
インデキシングコードは、分類を補助するためのタグであり、必ずしもすべての文献に一貫して付与されているとは限りません。
メインは分類、インデキシングは補助という位置づけで使うのが安全です。
IPCの表記方法──公報ではどのように表記されるか

IPCは公報の上部左側((51) Int.Cl.)に記載されています。
IPC記号の右にある日付は、そのPC記号が新設・実質改正された時期を示すバージョン表記(年・月)です。
イタリックで表示されているIPC記号はフルIPCを用いて分類された表記で、イタリックでない表示はメイングループのみを用いて分類された表記です。日本ではフルIPCで分類を行うため、イタリックで表示されます。
また、太字で表示されているのが発明情報で、標準フォントで表示されているのが付加情報です。
発明情報は、その特許の技術的な核心を示します。
付加情報は、補足的な特徴や周辺要素です。
このように、表示形式でIPC記号の情報を得ることができるので大変便利です。
検索するときにありがちな失敗は、
「付加情報側の分類だけを使ってしまい、肝心の発明情報側を見ていない」
というケースです。
まずは、どの分類が“発明の中心”を表しているかを意識して確認することが、分類検索の精度を大きく左右します。
IPCの調べ方
IPCは、①特許庁、②Espacenet、③WIPO などで調べることが出来ます。
① 特許庁の「IPC分類表及び更新情報(日本語版)」では、日本語で表記されたIPC分類表を見ることができます。

「国内外の分類の対応関係ツール「分類対象ツール)」は、IPC, FI, CPCの分類記号から分類を探すことができ、キーワードでも分類を探すことができるツールです。IPC, FI, CPCの対応関係が一覧で表示されるので、国内・海外の特許検索を行うときにたいへん便利です。

② Espacenet の「Classification search」も、分類記号およびキーワードからの分類検索を行うことができます。
Classification search は「Espacenet(欧州特許庁)の使い方 ー 分類サーチ」で詳しく説明していますので、ご参照ください。

③ WIPO の「IPC Publication」も同様に分類記号からIPC, CPC, FIを探すことができます。

IPCを調べるときに大事なことは「分類表の読み方」と「定義の参照」です。
WIPO の IPC Publiccation や Espacenet の Classification search では、「D」アイコンをクリックすればサブクラスの定義が表示され、「このサブクラスには何が含まれ、何が含まれないか」を確認できます。
分類はその集合の中にどのような特許文献が含まれているかという土地勘を持つことも重要です。そのためには、分類に含まれる文献をいくつか読んで分類の付与傾向を確認することが必要です。分類のタイトルだけで判断しないで、分類表の各所に設けられている注や参照を確認するとともに、その分類の中の文献を確認する習慣が大切です。
CPCとは
CPC(Cooperative Patent Classification、共同特許分類)は、欧州特許庁と米国特許庁が策定する分類で、2012年10月に分類表が公開され、2013年1月に発効しました。
現在は主要国においてCPCを使うことができます。
IPCと同じ番号体系を使い、IPCより細かい分類が用意されているので、実務上はCPCを中心にして検索式を作成することが行われます。
まとめ
IPCやCPCは、最初は取っつきにくく感じます。
しかし、ノイズを少なくして網羅性を上げることができるツールなので、使えるようになることが重要です。
分類を基本にした検索式を考えることで、特許検索者検索のレベルが向上します。
最後までお読みいただきありがとうございました。

