IPC と CPC を理解したら、次は FI と Fターム の理解です。どちらも日本の特許検索で頻繁に目にする記号ですが、「FIとFタームって何が違うのか?」という疑問を持っている方もおられるのではないでしょうか。
どちらも日本の特許検索で頻繁に目にする記号ですが、FIとFタームを使いこなせるかどうかで、検索の精度と効率は大きく変わります。
FIは、IPCをベースにした“国内向けの拡張分類”。
Fタームは、多観点で絞り込むために設計された“検索専用のタグ体系”。
両者は似ているようで、役割はまったく異なります。
この記事では、FIの構造からFタームの考え方までを基本から解説します。
IPC、CPCの次に身につけたい、日本の分類検索の核心に迫ります。
(以下の図は、特許庁、J-PlatPatの画面に加筆して作成しています。)
FIの概要
前回の記事「IPC とは?──特許検索が楽になる分類の基本と IPC から CPC までやさしく解説」でお伝えした通り、IPCは国際共通の分類で、特許文献を分野別に整理するための「図書館の書架」のような存在です。ただ、IPCは国際共通であるがゆえに、実務で検索を行うときに「粒度が粗い」「同じグループに様々な特許文献が入りすぎてノイズが多い」と感じる場面が出てきます。
そこで日本では、IPCをベースにしながら、国内文献の検索をより実用的にするための仕組みとしてFI(File Index)が整備されました。FIは規模が大きく、約19万の項目から構成されています。
ここで理解していただきたいのは、FIは「IPCを置き換える別分類」ではなく、IPCをベースとして、さらに細かく分類する拡張だという点です。IPC分類のレベルで大枠を掴み、国内検索で必要な精度まで解像度を上げる──これがFIの基本ポジションになります。
FIの構成と分類の付与規則
FIは公報の上部中央に記載されています。

FIの表記形式は、IPC記号に、必要に応じて分冊識別記号や展開記号が付加されるという形式になっています。

IPC記号:
FIは、世界共通のIPCをベースにして日本特有の技術に適した再展開を行うというコンセプトで設計されていますので、IPCが基本になっています。
検索実務でも、まずIPC記号で大きな分類を定めて、その分類の中をさらに展開記号や分冊識別記号で切り分けていくという順序で考えるのが自然です。
IPC記号は、IPCと同じく、セクション・クラス・サブクラス・メイングループ・サブグループを示す文字で構成されます。
IPCについては、「IPC とは?──特許検索が楽になる分類の基本と IPC から CPC までやさしく解説」を参照してください。
FIはIPCと同様に階層構造を持っており、その階層状態は分類表においてドットで示されています。そして検索では、通常、指定した分類の階層構造の下位に向かって階層検索が自動的に行われます。(ただし、検索システムによっては階層検索を自動的に行わない設定になっているものもありますので、マニュアルで確認する必要があります。)
展開記号:
IPCの最小単位は“グループ”(メイングループとサブグループ)ですが、グループでも分類としてはまだ広いときがあります。
FIは「展開記号」によってIPCのグループをさらに細分化します。展開記号は(原則として)100から始まる3桁の数字を用いて表記されます。展開記号はIPCと連続した階層を持っており、階層状態は分類表においてドットで示されています。
展開記号でグループを細分化することによって、適切な技術分野を指定することができますので、結果として、ノイズが減り、検索の効率が上がります。
分冊識別記号:
もう一つの重要な要素が分冊識別記号です。分冊識別記号は、アルファベット(A, B, C,…)で表記され、IPC または展開記号をさらに細かく分類するために使用されます。Z(その他)の分冊識別記号は、A, B, C,…の分冊識別記号に属さないものが分類されます。
分冊識別記号にも階層構造がありますが、IPCや展開記号と連続した階層ではなく、それが付加されているIPCや展開記号の下で階層構造を作ります。

この分類表の階層構造を図示すると以下のようになります。

FIは毎年改正が行われる
技術の進展と文献数の増加に対応して、年2回(1月と4月)、FI改正(追加・廃止・更新等)が行われます。
そして、新たなFIを作成した際には再分類が行われ、過去に付与されたFIを新たなFIに付与し直す作業が行われます。
更新が行われることがIPCとの大きな違いで、FI改正によって、検索の精度向上と検索効率の維持が図られています。
なお、この再分類の期間中は、既に再分類が行われたものと未だ行われていないものが混在しているので、新旧両方の検索インデックスを使用して検索を行う必要があります。
FI改正に関する情報は、特許庁ホームページの「FI改正情報」で得ることが出来ます。
ファセット分類記号
分類は、“主たる観点”に沿って階層的に細かく分解していきます。すると、ある技術が複数の観点にまたがる場合、階層の方向とは異なる見方、例えば横断的に技術を探したいときに、一意に定めることが難しいので、「見たい観点で横断したいのに追いづらい」という問題が出ます。FIでも同様です。
そのために用意されているのがファセット分類記号です。ファセット分類記号は、FIの所定の範囲をFIとは異なる観点から展開する分類記号です。したがって、ファセット分類記号を使用すれば、FIとは別観点からのサーチが可能になります。
ファセット分類記号は3個のアルファベットで構成され、最初の文字は、該当するセクションの記号と同一です。
複数セクションを横断的にサーチするための広域ファセット分類記号では、最初の文字は「Z」が使われます。

Fタームの概要
Fタームは、特許分類を補完する検索インデックスという位置づけで、分類というより検索のために設計された“観点タグの体系”です。
Fタームは、所定のFIカバー範囲ごとに、種々の技術観点(目的・用途・構造・材料・製法・処理操作方法・制御手段など)から細区分し、特徴点を付与しています。
このように多観点で解析・付与されていることがFタームの特徴で、IPCやFIと異なり、複数のFタームを組み合わせ(論理積)して、文献を絞り込むことが想定されています。
つまり、Fタームは多観点の分類なので、“単発で探す”よりも、“観点の積で精密に探す”ように作られているということです。キーワード検索だと、同義語・言い換え・表記ゆれの問題でゴミと網羅性の懸念がありますが、Fタームは「観点」にFターム記号を付与しているので、ロジックで検索を検討できる点が優れています。
ただし、分類の論理積を行う際には注意が必要です。Fタームの付与確率は7割程度と言われています。つまり、その観点に該当する特許文献のうち正しく分類記号が付与されているのは7割程度ということです。2つのFタームの論理積を作ると 0.7×0.7=0.49 と 5割以下 に低下します。Fタームの論理積は2個以下にした方が良いと言われるのはこのためです。
Fタームの構成
Fタームは、テーマ(テーマコード)とFターム(記号)のセットで定められます。
Fタームは、FIの一定の範囲を、複数の技術観点で区分しています。この範囲を FIカバー範囲 と呼び、技術的特徴を表す テーマ を設定しています。


各テーマには英数字5桁のテーマコードが付与されます。
Fタームは、「観点(英字2桁)」+「数字2桁」から構成されます。(「テーマコード(英数字5桁)」+「観点(英字2桁)」+「数字2桁」でFタームを記述する場合もあります。)
Fタームは公報の上部右に記載されています。

FI, Fタームの調べ方
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)の「特許・実用新案分類照会(PMGS, パテントマップガイダンス)」から、FI、Fターム、IPC を検索することが出来ます。

FIの分類記号が分かっているとき:
(1)「コード照会」タブを選択します。
(2) 検索対象として「FI/ファセット」を選択します。
(3) 「分類」に分類記号を入力し、「照会」ボタンをクリックします。

Fタームの分類記号が分かっているとき:
(1)「コード照会」タブを選択します。
(2) 検索対象として「Fターム」を選択します。
(3) 表示画面として、「Fタームリスト」あるいは「Fターム解説」を選択します。
(4) 「分類」に分類記号を入力し、「照会」ボタンをクリックします。

キーワードから FI を調べるとき:
(1)「キーワード検索」タブを選択します。
(2) 検索対象として「FI/ファセット」を選択します。
(3) 表示画面として、「FI」あるいは「FIハンドブック」を選択します。
(4) 「キーワード」の検索範囲として「FI/ファセット単位」または「メイングループ単位」を選択し、キーワードを入力します。
(5) 検索対象の分類を設定するときは、「サーチ範囲(分類)」に分類記号を入力し、「検索」ボタンをクリックします。
キーワードから Fターム を調べるとき:
(1)「キーワード検索」タブを選択します。
(2) 検索対象として「Fターム」を選択します。
(3) 表示画面として、「Fタームリスト」あるいは「Fターム解説」を選択します。
(4) 「キーワード」の検索範囲として「観点単位」または「テーマ単位」を選択し、キーワードを入力します。
(5) 検索対象の分類を設定するときは、「サーチ範囲(分類)」に分類記号を入力し、「検索」ボタンをクリックします。

まとめ
- FIは、IPC分類をベースに、国内検索で必要な精度まで解像度を上げる仕組みの分類です。
- Fタームはテーマ(技術範囲)ごとに多観点で解析・付与され、複数の観点の論理積で絞り込むことが前提の分類です。
- J-PlatPatのPMGSは、これら分類の意味を確認し、逆引きするための実務ツールです。
- FIとFタームは分類の方向が異なるため、FIの検索ではヒットしなかった文献が、Fタームで検索するとヒットするということは良く起こります。一方の検索結果だけで満足しないで、FI、Fタームの両方で検索することで、漏れのない検索結果が得られます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
【参考文献】
「分類の概論」 工業所有権情報・研修館 2025年4月1日発行

