「AirPodsをつけるだけで健康チェックできる」そんな未来が、現実になるかもしれません。
Appleが出願した特許 US2025/0095844A1 には、AirPodsやApple Watchを活用して“からだの異変”を見逃さない仕組みが詳細に記されています。センサーとAI、そして“あなたの耳”、がカギとなるこの技術は想像以上にスゴいかもしれません。
キーワードは「バイオメカニカル・インペアメントの検出」
バイオメカニカル・インペアメントとは、生体力学的機能障害のことで、身体の機能損傷や機能不全などの障害です。この特許では、日々の歩き方や呼吸、心拍の変化を検知して、健康状態を定期的にチェックするシステムが提案されています。
しかもそれは、AirPodsやApple Watchなど、すでに私たちが身につけているデバイスを使って、です。
アイデアの全体像:まるで“寄り添う専属医師”
この特許で説明されている内容は、簡単に言うとこのような流れです。
- 普段の生活中にAirPodsやApple Watchがデータを記録する
- そのデータをAIが分析し、“あなたらしい健康の基準”をつくる
- 1か月後、同じ場所・状況で再度データを取得する
- 前回のデータと比較して“異変”を検知する
- 変化があればアラート通知!(例:歩き方が変、呼吸が浅い など)
まさに、あなたの健康をみまもる医師がいつも寄り添っているようです。
どのようなデータを取っているのか?
この特許では、様々な種類のセンサーが使われています:
デバイス | 取得するデータ | |
AirPods | 耳 | 体内音(関節音、歯ぎしり、呼吸音) |
Apple Watch | 手首 | 心拍数、加速度、VO2max、皮膚温度など |
iPhone | 体動 | 歩行時の重心や左右バランス、位置情報など |
特に注目するのは耳の中です。そこは呼吸や関節音、首の動きなどが集まる場所です。マイクを内蔵したAirPodsを耳の中に入れて音を拾えば、まるで“身体の内側の音”を聞いているかのように重要なデータが取れるのです。
AIがあなた専用の健康プロフィールを作成
取ったデータから、AIがあなたに特化した“健康プロファイル”を作成します。
- 最初に、健康なときのデータで「基準(ベースライン)」を作る
- 1か月後に、その基準と新しいデータを比較して異常がないかチェックする
その結果、歩行のクセが変わっていれば…
呼吸のリズムが変わっていれば…
心拍の回復に時間がかかっていれば…
AIが「そろそろ休んだほうがいいかも」と教えてくれる、というわけです。
この特許では、最新のAI/機械学習モデルがふんだんに使われます。
- ディープラーニング(CNNなど)でフィットネススコアを予測
- 過去の自分の健康履歴から「らしさ」を学習
- 類似ユーザーのデータでモデル精度を補完
- GPSと連携して「同じ状況での比較」を実現
これにより、より個別化されたアドバイスが可能になります。例えば、
- ランニング後の回復が遅い → 心肺機能が落ちてる?
- 姿勢が改善してるか確認 → 整体や治療の効果をチェック
- 高齢者の転倒リスクを事前に検出 → 家族と医師に通知
- 長期的な健康推移を記録 → 医療情報として未来に使う
このようにしてAirPodsはあなたのからだの異変”を見逃さないのです。
特許図面の説明
Fig.1:健康モニタリングの全体フロー
Fig.1は、ユーザーの健康状態を検知するための全体的な処理ステップをブロック図形式で示したものです。
この図は、「日常生活の中で、自動的に健康を監視し、異常があれば通知する」というパッシブ・ヘルスチェック”の仕組みを端的に示しています
- センサーの可用性チェック(101)
→ デバイス(AirPodsやApple Watchなど)がユーザーの身体に装着され、電源が入っているかを確認します。 - センサーデータの記録(103)
→ 加速度、心拍数、呼吸音、骨振動、関節音などを記録。
→ データはデバイスまたはクラウドに保存。 - AIによる健康スコア予測(104〜106)
→ 機械学習モデルにセンサーデータを入力し、
健康プロファイル(例:歩行の安定性や心肺機能スコア)を生成。 - 基準と比較し、異常を検知(107)
→ 前回の健康状態と比較し、明らかな変化(劣化)があれば通知。 - 必要に応じて医療連携(108)
→ ユーザーの許可があれば、医療記録に統合可能。

Fig.2: 時系列での健康比較プロセス
FIg.2は、健康状態を「時系列」で追跡するための詳細なフローチャートです。
例えば、1か月前と今の歩き方を比べて「少しバランスが悪くなっている」と検出し、通知します。そして、あなたは「もしかして、姿勢が悪くなってるかも?」と気づくことができるのです。
- 初回(T1)
• センサーデータ取得(201)
• 健康プロファイル作成(202-203)
• 時間と場所を記録(204) - 次回(T2)
• 同じ場所でのセンサーデータ取得(205)
• 現在の健康プロファイル作成(206-207)
• 過去のプロファイルと比較(208)
• 異常があれば行動を実行(通知など)(209)

Fig.3:ディスプレイシステムの断面図
Fig.3は、Apple WatchやAirPodsなどに内蔵されるセンサー群やプロセッサの配置と機能ブロックを示したものです。
この構成により、AirPodsやApple Watchが「耳や手首で取得した身体情報」を、リアルタイムでAIに渡し、処理・通知ができるようになります。
- メインプロセッサ(304)→ データ処理や機械学習の推論を担当。
- モーションセンサー(加速度、ジャイロ)(310)
- 心拍センサーやPPG(光電式脈波)(320)
- 温度・気圧・磁気センサー(316, 317)
- マイクロフォン(330)→ 呼吸音や骨伝導音を取得
- 通信モジュール(324)→ Wi-Fi、Bluetooth経由でスマホやクラウドと連携。
- GNSS(GPS)プロセッサ(315)→ 位置情報と時間を記録。
- I/Oインターフェース(340)→ 通知の表示やハプティック(振動)フィードバックなど

まとめ
上記の図面を通して見えてくるのは、Appleが目指す未来のヘルスケアの姿です:
- 人間の体に寄り添う“日常的センシング”
- AIによる“パーソナライズされた予防医療”
- “ユーザー主導”の健康管理とプライバシー重視
つまり、AirPodsは「聴く道具」から「診る道具」へと進化するのです。
特許情報
特許番号:US 2025/0095844 A1
タイトル:Detecting Biomechanical Impairment Using Wearable Devices
発明者:Joseph Vedadi
出願人:Apple Inc.
公開日:2025/3/20
出願日:2024/9/18
特許の詳細については、US2025/0095844を参照してください。
【参考記事】[Patently Apple] (https://www.patentlyapple.com/2025/03/a-new-apple-patent-reveals-that-future-airpods-could-use-machine-leaning-ai-to-monitor-various-aspects-of-a-users-health.html)
※企業の特許は、製品になるものも、ならないものも、どちらも出願されます。今回紹介した特許が製品になるかどうか現時点では不明です。ご注意ください。